NECは7月12日、スーパーシティー構想に向けた取り組みを加速させ、2025年度までにスーパーシティーおよびスマートシティーに関して全国200都市に展開し、海外を含め500億円の事業規模を目指す計画を明らかにした。約100人の専任体制の「スーパーシティ事業推進本部」を4月に設置済み。スーパーシティーに関するビジョンに「世界に誇れる『地域らしい』まち」を掲げ、社会実装を見据えた社内体制の拡充やソリューションの強化などを進める。
NEC 執行役員 スーパーシティ事業推進本部長の受川裕氏
スーパーシティ事業推進本部長を兼務するNEC 執行役員の受川裕氏は、「日本の社会インフラを支えてきたNECが一企業としての使命、責任、役割に基づき、地域とともにスーパーシティーの実現を目指す。経済基盤の活性化、住む人や集まる人の生活の質の向上、地域特有の課題の解決を通じ、地域固有の“らしさ”と新しい“らしさ”を実現し、人々が安心して生き生きと暮らし続けられるまちを目指す」と述べた。
スーパーシティーの目標
NECの営業部門やグループ会社の開発・保守など全国114拠点も活用する。コンサルティングサービス、システム構築・サービスを提供し、地域に寄り添う丁寧なサービスの提供を目指すとする。2021年度は20都市で展開、2025年度に200都市に展開する時点でパートナー事業者数を500団体、スーパーシティー/スマートシティーに関与する社員を約1000人に拡大する。
スーパーシティーは、2020年5月に国会で可決された「スーパーシティ法」によって推進される、10年先のより良い生活を先行的に実現する「まるごと未来都市」の構築を目指すもの。「スマートシティーの特別版」とも位置付けられている。
スーパーシティーの概念
スマートシティーでは、地域が持つ個別の社会課題の解決が中心だったのに対し、スーパーシティーでは、生活全般にまたがる複数分野の先端的なサービスの提供、複数分野間でのデータ連携が重視される。また、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」でも、スーパーシティーに重点投資すること、その成果を起点に2025年度までに100都市でスマートシティーを実現することが示されている。
現在スーパーシティー型国家戦略特別区域の指定に向けた公募が行われ、応募中の31自治体のうち自治体にNECが事業者として参画する。データ連携基盤およびサービス事業者での参画は12自治体、全体の取りまとめ役としての参画が4自治体ある。スマートシティーは、全国13地域での取り組みに事業者として参画した。
同社はスーパーシティーの社会実装のための重点施策として、「効果検証に基づく都市経営サービス」「住民を中心とした共創プロセス」「暮らしに寄り添う分野間データ利活用」――の3点を掲げる。
「効果検証に基づく都市経営サービス」では、歳出削減や歳入拡大といった都市経営の観点からコンサルティングサービスを提供する。アビームコンサルティングと連携し、現状把握や課題抽出、施策提示を行うほか、NECが持つITおよびデジタル変革(DX)の経験や人材を生かし、サービス実装を加えたトータルコーディネートを提供するという。
「住民を中心とした共創プロセス」では、住民との対話からインサイトや地域課題を深く堀下げ、関係者と共創しながらビジョンを策定する。本質的な解決策を構造化、視覚化することでサービスを具体化するほか、パートナーシップによる新たなサービスを創出、スーパーシティー構想の応募において関係する約760団体のうち、約4割にあたる地域を介した約300団体との連携強化を図る。
「暮らしに寄り添う分野間データ利活用」では、複数分野にまたがる課題をデータ活用で解決する取り組みと位置づけ、データ連携基盤を用いて医療データと防災データを連携させ、旅行時の救急診療にデータを活用したり、災害時の処方薬配送などに活用したりといった提案を行う。一方で観光には観光客の趣味嗜好、観光地の混雑状況、交通情報、天候情報などと組み合わせてリアルタイムで最適な周遊プランを提示。訪問履歴や満足度などに基づいたリピート率向上への施策にも結びつけるという。